偽造防止の事情
最近の偽造事情
ここ数年で、紙幣、金券・商品券・回数券、入場券・チケット、優待券・割引券などのお金に相当するもの、各種証明書など資格や能力がなくては入手できないもの、特殊品やブランド品などの高級品に関連する商品パッケージ、商品タグなどの偽造事件が急増しています。特に紙ベースでの偽造(パッケージ、包装材、商品タグなども含む)が大きく増加しています。その内容は大きく分けて2つです。
(1)カラー複写機またはパソコン&スキャナ&カラープリンタを使用した偽造(個人・出来心)
(2)中国などの外国にて本格的設備により大量製造されて国内に持ち込まれる偽造(プロの犯行・黒船)
上記(1)は個人による出来心の偽造です。まず素人による偽造ですが、その原因の一つにはカラーコピーの普及があげられます。現在ではどこのコンビニエンス・ストアーでもカラーコピーが標準で設置されています。これは数年前までにはなかったことです。特にセブンイレブンには、ゼロックス社の高性能な最新鋭機が全国統一で設置されています。カラーコピー機を利用して、紙ベースの金券、商品券、回数券、チケット、証明書などが偽造されるケースが増えています。数は少ないですが、チリも積もれば山となり、多くの人間により偽造されると大きな被害につながっています。
上記(2)ですが、専門の設備を使用したプロによる大規模な偽造ですが、最近では中国にて偽造品を製作して日本に持ち込むといういわば『黒船』的な偽造事件も多数発生しており、大きな被害が出ています。一般素人では製作できないようなものでも、プロが専門設備を使用して製作するので、簡単な印刷物(偽造防止レベルが低い印刷物)であれば、偽造品の製作ができてしまいます。最近では地方の小規模な(発行数量が少ない)ものまで偽造され被害が出ています。
よって近年の偽造防止印刷に求められることは、専門の設備を使用したプロによる大規模な偽造とカラーコピーなどを利用した素人による安易な偽造の両方に対応する必要があります。
偽造防止技術の紹介
偽造防止とは、ある特定の一つの手法のことを指すのではなく、簡単には製作できない複数の技術のことで、どの技術をどのように使用するのかがポイントになります。大きく分けて偽造防止には以下のものがあります。
(a)特殊な紙
(b)特殊なインク(による印刷)
(c)特殊な加工
(d)特殊デザイン
(e)その他
(a)~(e)のそれぞれに複数の手法があり、これらを組み合わせて偽造防止を行います。弊社では現在、約20種類の偽造防止手法の実現が可能です。要求される仕様とコストに合わせて、最適と考えられる複数の手法を組み合わせて偽造防止商品を製作しています。
また『フレキソ印刷』という日本では数少ない特殊印刷が可能な印刷設備を用いて『特殊光沢印刷』という偽造防止を実施しています。この技術は弊社にて開発、主に偽造防止のために使用しています。実現するには特殊な設備、特殊な製版技術と特殊な印刷技術、さらに多くのノウハウが必要なために、他社にて簡単に製作することは困難であり、これまでに偽造されたことはありません。なお、安心してお客様にこの『特殊光沢印刷』を利用していただくために、弊社にて特許を出願、平成21年に特許取得済み(特許番号『第441175号』)です。
弊社にて偽造防止を行う場合には、上記の特殊印刷用のフレキソ印刷設備を使用する場合と一般的なオフセット印刷設備を使用する場合の両方があります。要求される仕様とコストにより使い分けしています。
偽造防止の採用について
どのような偽造防止を施せばよいかという問い合わせがよくあります。例えば商品券を製作する場合には、額面が大きなもの、大量に流通するもの、使用期限が長いもの、使用範囲が広いものなどは、高度な偽造防止または複数種類の偽造防止を仕込む必要があります。下記の点を考慮して偽造防止対策を決定します。
(1)額面(100円 200円 500円 1,000円 2,000円 3,000円 5,000円 10,000円など)
(2)製作数量(数千枚 数万枚 数十万枚 数百万枚)
(3)使用期限(数日 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 半年 一年 無期限)
(4)使用範囲(一店舗のみ 複数店舗 都道府県市町村内 全国どこでも)
上記(1)に関してですが、額面が1,000円を越える場合には、最低2種類の偽造防止を施す必要があると考えます。また更に高額な場合には、3種類以上の偽造防止を施すことをお勧めします。
上記(2)に関してですが、発行数量が1万枚を越える場合には2種類、10万枚を越える場合には3種類程度の偽造防止を、100万枚を越える場合には、かなり高度な偽造防止を3種類以上施すことをお勧めします。
上記(3)に関してですが、偽造品の製作は1ヶ月程度あれば可能です。よって使用期限が2ヶ月を越える場合には、最低でも2種類の偽造防止を、また使用期限が半年以上の場合には、高度な偽造防止を3種類以上施すことをお勧めします。
上記(4)に関してですが、使用可能な店舗(場所)が増えるほどに、より高度な偽造防止対策をする必要があります。
偽造被害について
弊社には偽造防止に関する相談がよくあります。特にここ最近では毎月何件もの相談が持ち込まれています。世間での平均値はわかりませんが、実際に弊社に持ち込まれた偽造事件や偽造防止に関する相談の経験によると、多い場合には『発行した数量の10%程度が偽造』されています。少ない場合でも1%程度、平均すると『発行した数量の2~3%が偽造』されてしまっています。
例えば『商品券』の場合には、総額10億円分(例えば1千円券を100万枚製作)の商品券を発行するような場合だとですが、1%偽造されただけでも1千万円程度の被害が出ます。下手をすると億単位の被害金額になる可能性もあります。現在のように、まだまだ景気が停滞している時代であれば、商品券の偽造を考える人間は平時よりも多いと推測されますので要注意です。
採用実績の紹介
『特殊光沢印刷』を中心に、フレキソ印刷設備を使用して、大手アパレルメーカー、大手食品メーカー、マスコミ関係、その他の上場企業、都道府県や市町村、警察関連などで採用実績があります。また、海外の高級化粧品ブランドやアパレルメーカーなどにもサンプル納入などの実績があり、現在採用に向けた商談中です。さらに、多くの企業や店舗にて、金券、商品券、回数券、入場券、チケット、証明書、商品パッケージ、商品タグ(下札)などにて採用された実績があります。また既に完成している商品やパッケージに対して、後付けで偽造防止効果を持たせるために、特殊なシールを製作して納入した実績が多数あります。
偽造防止に対する考え方
偽造防止印刷技術の中でも偽造防止の技術レベルが高いものは高価でコストがかかります。しかしこれは損害保険(自動車保険や火災保険など)と同じです。自動車保険や火災保険は一年間何もなければ、一見かけた保険料は無駄に見えます。もしも不幸なことがあった場合には、火災の場合であれば数千万円、交通人身事故の場合であれば億単位の保証が必要になる場合があります。そういった場合には、かけていた保険により充分な保証を受けることができ、それにより助かる訳です。
偽造防止の技術レベルが高くて、商品券などの印刷物の製作コストが数十万円~数百万円高くなったとしても、偽造される確率が大きく下るまたは限りなくゼロに近付けることができて、その結果、数百万円~数千万円を超えるような被害を回避することができるのであれば、製作コストの差額は安いモノだと考えることができます。